腸内環境の不全とうつ病の関係 -その3-

腸内環境の不全とうつ病の関係 症状と原因

非典型的な精神症状の原因物質

1.クロストリジウム・ディフィシレによる特異意的代謝物

クロストリジウム・ディフィシレによる特異意的代謝物の、HPHPA (3-(3-ヒドロキシフェニル)-3-ヒドロキシプロピオン酸) や4-クレソールは、ドーパミンからノルアドレナリンへの変換酵素を阻害することで脳内ドーパミンの過剰を引き起こし、前述したような精神症状を招くことが指摘されており、また、クロストリジウム・ディフィシレによる特異意的代謝物の一つである3-ヒドロキシフェニルプロピオン酸は、脳内エンケファリンを分解する酵素を抑制し情緒不安定を引き起こす可能性が指摘されています。

これらの代謝物は、神経毒になり行動と神経系の異常性(自閉症、重度うつ病、統合失調
症、チック症、慢性疲労症候群、大腸炎など)を引き起こすと言われています。

2.真菌などの慢性感染や過度のストレス

真菌などの慢性感染による慢性的な炎症や免疫系反応の亢進過度のストレスによる副
腎コルチコイド上昇などが、トリプトファンからセロトニン産生を抑制し、神経毒性を持
つキノリン酸の産生を亢進させ自閉症、統合失調症、うつ病、認知症などを引き起こすこ
とが指摘されています。

3.カンジダ

カンジダは、酵母菌毒性副産物のアセトアルデヒドを過剰産生し、アセトアルデヒドはドーパミンやセロトニンなどの神経伝達物質と反応して、テトラヒドロイソキノリンというオピオイド様化合物を産生し、脳神経障害の要因として指摘されています。

4.リーキーガット症候群

小腸の粘膜が破壊されるリーキーガット症候群(腸漏れ症候群or腸管壁浸漏症候群)が生じると、通常は体内に吸収されることのないモルフィンを取り込んでしまうことになります。
小麦に含まれるタンパク質のグルテンや牛乳に含まれるタンパク質のカゼインが、腸でタンパク分子に分解されるとモルフィン(グリアジノモルフィン、カソモルフィン)と呼ばれる物質になります。

血液を通して体内に入ったモルフィンは、麻酔薬のモルヒネに似た作用を持つことが知られており、このモルフィンは脳膜を通過して脳内に入り、小児の脳、特に、言語や聴覚機能を司る側頭葉の働きに影響を与え、ADHDの引きがね、また、統合失調症の原因になる可能性が報告されています。

5.リーキーガット症候群によるアレルギー反応や慢性炎症

リーキーガット症候群(腸漏れ症候群or腸管壁浸漏症候群)が生じると、グルテンやカゼイン以外の様々な食物の未消化タンパク質や食品添加物、化学調味料などが体内に侵入し過剰なアレルギー反応や慢性炎症を生じさせ、それにより全身性に炎症性サイトカインが活性化し脳内にも過剰な炎症反応が生じ、神経細胞の酸化ストレスダメージによる精神症状も指摘されています。

6.腸内環境不全によるもの

腸内環境不全により、菌毒素や慢性炎症、栄養の消化吸収不良、細胞の新陳代謝低下などにより細胞内に有害物質の蓄積が起きることが知られており、水銀などの有害重金属の脳神経への蓄積が神経伝達物質産生障害を引き起こし精神症状の原因にもなっています。
細胞の解毒力低下は、有害重金属のみならず環境ホルモン物質など有害化学物質の蓄積も招いており、それらによる精神症状発症も指摘されています。

腸内環境を調べる検査

腸内環境検査

腸内環境を調べる検査の説明

広範囲便分析検査

便中の良性細菌、悪性細菌、日和見菌の種類や菌量が調べられ腸内環境の状態を知ることができ、腸の炎症の有無や炎症の重症度を評価するのに有効です。

その結果により治療方針が変わるので、治療の仕方や治療の優先順位などを決めるためにも大切な検査です。

また、炎症が強い場合にはリーキーガット症候群の可能性も示唆されます。それにより食物アレルギーを合併し症状が悪化、複雑化されていることが予測できます。

有機酸検査

有機酸検査は、少量の尿から検出される代謝副産物から、細胞の新陳代謝状態や栄養不足、体内毒性物質の蓄積などをチェックできる検査です。(以下の様な事が判断可能です。)
*腸内環境を悪化させる細菌や酵母菌(カンジダ菌など)の異常増殖の評価
*細胞やミトコンドリアのエネルギー生成能力の評価
*消化吸収障害などの胃腸機能の評価
*精神や認知機能に影響を及ぼす神経伝達物質の評価
*アミノ酸やビタミン・ミネラルなどの評価
*栄養素や抗酸化物質欠陥の評価
*脂肪酸代謝の評価

有機酸検査結果のサンプル画像

遅延型フードアレルギー検査

アレルギーとは、外部の異物を排除するために身体に備わっている免疫反応が、特定の原因に対して過剰に起こることを言います。主にアレルギーのタイプには、アレルギーの原因と接触後、ただちに発症する即時型アレルギーと、数時間~数日経って初めて反応が起こる遅発性アレルギーの2種類があります。 このアレルギーは即発性のため原因が比較的特定しやすいですが、一方の遅延型タイプはアレルギー反応が出るまで数時間から数日かかるため原因を認識するのが容易ではありません。このため気づかない内にアレルギー源を長期的に摂取し、知らず知らずのうちに抗体による免疫が亢進され、疲労や頭痛、皮膚トラブル、うつ、不安、消化不良、過敏性腸症候群関節炎、不整脈といった様々な慢性症状の原因になっている場合があります。

腸内環境改善の治療

心身のストレスの軽減が重要で、ライフスタイルや物事の考え方を見直すことも大切です。

*悪玉菌を減らし腸粘膜の炎症をとる食事療法
糖質、小麦、乳製品の取りすぎに注意、酸化した油やトランス脂肪酸などの炎症を引き起こしやすい油、防腐剤や添加物の多い加工食品などを避ける。タンパク質の取りすぎも、腸内のアルカリ化を招き悪玉菌が増殖しやすくなる。

善玉菌を増やす野菜や海藻など食物繊維、発酵食品を増やす。

*プロバイオティク(善玉菌:乳酸菌やビフィズス菌)の摂取
*プレバイオティクス(善玉菌の栄養源摂取:食物繊維、オリゴ糖など)
*悪玉菌を減らす食事療法や腸粘膜の炎症をとるハーブやグルタミンの摂取
*腸粘膜結合因子の強化(VitD摂取)
*悪玉菌(特にカンジダ菌)による腸内バイオフィルムの剥離
*悪玉菌を除菌するハーブや分解酵素の摂取
*副腎疲労やミトコンドリア機能低下、ビタミン・ミネラル不足も合併していることが回
復を遅らせていることが多く、それらのサポートも重要です。

*腸内環境改善後も症状回復が不十分の場合には、細胞に蓄積している有害物質の積極
的なデトックス治療が必要になります。

次回は腸内環境不良の症例をご紹介します。