香りの記憶

緑の深まる季節。ちょっとした小道や公園を歩いていると、木々の香りが季節になりました。皆さんは、この木々の香りを感じた時、どんな気分になりますか?

ある香りをかいだ瞬間に、昔の「記憶」が一気に蘇がえり、「楽しかった」「悔しかった」といった感情を引き起こすことがあります。例えばコーヒーの香りが漂ってきた瞬間、休日の朝の光景が頭に浮かび、ゆったりとした気分になったり、潮風の香りや、山の木々の香りから、郷里を思い出だして懐かしさを感じたり、運動場の砂と土の香りにふれ、学生時代の部活動の思い出が蘇える。このように香り(臭覚からの情報)によって引き出される記憶は、視覚や聴覚などの他の感覚器を通した記憶に比べて、私たちの感情に強く働きかけるといわれていています。さらにこうした記憶は、私たちの記憶の中に留まりやすく、年月とともにより鮮明になることさえあるそうです。

香りと記憶や感情との結びつきを生物学的に説明すると、まず、鼻から入った香りは、臭神経を介して、直接的に「原始的な脳」と言われている大脳辺縁系に伝わります。次に、大脳辺縁系に伝えられた情報は、感情・情動・記憶などをコントロールする脳に伝えられます。視覚など他の感覚器からの情報は「考えて判断する脳」と言われている大脳新皮質を介して大脳辺縁系に伝わるのに対し、臭覚からの情報は直接的に大脳辺縁系に伝わるので感情・情動・記憶との結びつきが強くなります。

こうした香りの効果を利用して、自分の良い記憶を引き起こしてくれる香りを探せば、その時の記憶と結びついている感情や感覚を引き出すことができます。

生活の中で、自分の好きな香りを意識して探索してみてください。なかなか見つからなければ、アロマテラピーで使用する精油(エッセンシャルオイル)やフレーバーティーなど、何種かの香りを嗅いでみると良いかもしれません。もし記憶と結びつかなくても、この香りをかぐと、「元気が出るな」「落ち着くな」「安心するな」といった香りが見つかると思います。