自律神経失調症のセルフケアによる治療法
ご自宅でできる心と体の整え方
自律神経失調症からの回復に、心療内科では医学的な治療と並行して、「セルフケア(自己管理)」を大切にしています。日々の暮らしを少し見直すだけでも、自律神経のバランスを整え、不調の改善につながります。ここでは、当院が推奨する自律神経失調症のセルフケア方法を紹介いたします。
<自律神経を整えるセルフケアの基本>
- 規則正しい生活リズム
自律神経は、昼間に活動的になる「交感神経」と、夜にリラックスする「副交感神経」がバランスをとりながら働いています。睡眠不足や不規則な生活はこのバランスを崩す原因になります。
・毎日同じ時間に起きて、同じ時間に寝る
・朝日を浴びて体内時計をリセット
・夜は就寝2時間前までにスマートフォンやパソコンは避ける
・十分な睡眠(7~8時間)が自律神経の回復には不可欠
特に、起床後1時間以内に太陽の光を浴びることは、メラトニン(睡眠ホルモン)のリズムを整えるのに効果的です。
- 食事で体と心を整える
栄養バランスの取れた食事は、自律神経の安定に欠かせません。過度なダイエットや偏食は、体のストレス反応を強めてしまいます。
・3食しっかり食べる
・タンパク質、ビタミンB群、鉄、マグネシウム、オメガ3脂肪酸を含む食品を積極的 に。
・血糖値の安定:高血糖→低血糖の急激な変化は交感神経を刺激。低GI食品を選ぶこと。
特にビタミンB群(豚肉、玄米、納豆など)は、神経の働きをサポートする栄養素として重要です。
自律神経によいとされる食材
栄養素 |
食材例 |
効果 |
ビタミンB群 |
豚肉、納豆、卵、玄米 |
神経の修復・代謝促進 |
マグネシウム |
海藻、豆腐、ナッツ類 |
筋肉の弛緩・抗ストレス |
トリプトファン |
バナナ、乳製品、豆類 |
セロトニン(幸せホルモン)前駆体 |
DHA・EPA |
青魚(サバ、イワシ) |
脳機能・情緒の安定 |
飲料
- カフェイン・アルコールは控えめに。興奮性を高め自律神経を乱します。
- ハーブティー(カモミール・レモンバームなど)はリラックス効果あり。
- 軽い運動やストレッチ
適度な運動はストレスを和らげ、交感神経と副交感神経の切り替えをスムーズにします。激しい運動は逆効果となることもあるため、無理のない範囲で取り組みましょう。
有酸素運動(ウォーキング・ジョギング・サイクリングなど)
・効果:有酸素運動は副交感神経の働きを高め、自律神経のバランスを整えるとともに、ストレスホルモン(コルチゾール)を低下させます。
・頻度と時間:週3~5回、1回20~30分程度が理想。
・おすすめ:朝の軽い散歩、リズム運動(ラジオ体操、ステップ運動)
深呼吸をしながらのストレッチやヨガ
・緊張状態にある筋肉を意識的に弛緩させ、副交感神経を優位に導きます。
・心拍・呼吸の安定、セロトニン分泌増加
・不安感やイライラの軽減
・睡眠の質の向上
- 深呼吸とマインドフルネス
ストレスを感じた時や気持ちが不安定なときは、「今ここ」に意識を向ける呼吸法やマインドフルネスが役立ちます。
呼吸法の一例:4-7-8呼吸法
①息を4秒かけて吸う
②7秒間息を止める
③8秒かけてゆっくり吐く
→ これを数回繰り返すことで、副交感神経が優位になり、心身が落ち着きます。
*1日数回、1回3~5分程度行うのが有効。
- 入浴と温めケア
冷えは自律神経の働きを妨げる要因の一つです。体を温めることで、副交感神経が活性化し、リラックス効果が高まります。
・38〜40℃程度のぬるめのお湯にゆっくり浸かる(15~20分)
・足湯や温熱パッドで手足やお腹を温める
・腹式呼吸をしながらの入浴もおすすめ
香りのよい入浴剤やアロマを取り入れると、嗅覚を通じて自律神経にやさしく働きかけます。
- 睡眠の質を高める
不眠や浅い眠りは、自律神経をさらに乱す原因になります。寝つきをよくし、深く眠れる環境を整えることが重要です。
・就寝1時間前からはリラックスタイムに切り替える
・就寝前のスマホやテレビは控え、照明も落とす
・入眠儀式(読書、音楽、アロマ)で副交感神経を優位にする
・寝具や寝室の環境(温度・湿度・静かさ)を整える
ハーブティー(カモミール、ラベンダーなど)も眠りを促すサポートになります。
補足: アロマセラピー
精油(エッセンシャルオイル)の香りを用いて神経を落ち着かせる方法です。
効果的な精油
精油 |
効果 |
ラベンダー |
不眠・緊張・頭痛に有効 |
ベルガモット |
不安・抑うつの緩和 |
イランイラン |
血圧を下げ、精神安定作用あり |
ローズウッド |
呼吸の安定・気分高揚 |
使用方法
- ディフューザーでの芳香浴
- 入浴時に2〜3滴(※精油をそのまま肌に使用しない)
- アロマスプレーとして部屋に噴霧
<心のセルフケアも忘れずに>
ストレスを「ためない・抱え込まない」
ストレスは自律神経の大敵です。自分の感情を無理に抑え込まず、吐き出すことが大切です。
過剰な責任感、完璧主義傾向を見直す。
・信頼できる人に話す
・日記を書く、感情を文字にしてみる
・「頑張らない日」をつくる
完璧を目指しすぎず、時には「何もしない時間」を持つことも自律神経には有効です。
趣味や楽しみを取り入れる
好きなことに没頭する時間は、副交感神経を活性化し、心の回復を促します。
趣味やリラックスタイムを意識的に確保する。
・読書、音楽、絵を描く、植物を育てるなど
・ゆっくりお茶を飲む、自然にふれる
「小さな幸せ」を日々の中に見つけることが、自律神経を整える力になります。
<セルフケアだけで改善しないときは>
自律神経失調症は、軽度であればセルフケアで十分改善することもありますが、症状が長引いたり、日常生活に支障をきたす場合は、早めに専門医に相談することが大切です。
当院では、カウンセリングや漢方療法をはじめ、心と体の両面からサポートを行っております。ご自身で抱え込まず、お気軽にご相談ください。
まとめ
自律神経失調症のセルフケアは、生活リズムの見直しやリラクゼーション、食事や運動といった、日常の中でできることが中心です。無理をせず、自分に合った方法を少しずつ取り入れることが回復への第一歩となります。
ご自身の「心と体の声」に耳を傾けながら、ゆっくりと整えていきましょう。必要なときは、私たち専門家がしっかりとサポートいたします。
院長 佐久間一穂
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