パニック発作が起きたとき、どうすればいい?~自分でできる不安対処法~
~自分でできる効果的な対処法を詳しくご紹介します~
パニック障害やパニック発作でお悩みの方に向けて、発作が起きたときに自分でできる効果的な対処方法を、分かりやすく詳しくご紹介したいと思います。
パニック発作とは、突然、理由もなく起こる強い不安と身体症状のことです。動悸や息苦しさ、発汗、ふるえ、めまい、吐き気などの症状が急激に現れ、「このまま死んでしまうのではないか」「気が狂ってしまうのではないか」というような強い不安感や恐怖感を感じることが特徴です。
多くの方が「外出するのが怖くなった」「また発作が起きるかもしれないと思うと何もできなくなった」と訴えられます。しかし、適切な対処法を知っておくことで、パニック発作の不安に振り回されずに生活できる可能性が高まります。
◆ まず知っておきたい! “パニック発作は命に関わるものではありません”
パニック発作は非常に不快な症状を伴いますが、医学的に見て、それ自体で命を脅かすような危険はありません。心臓発作や脳の病気と似たような症状が出ることもありますが、パニック発作は一過性であり、多くの場合10分〜30分以内に自然におさまります。
とはいえ、体験としては非常につらく、「このまま気を失うのでは」「人前で倒れてしまったらどうしよう」といった思考が頭の中をぐるぐるとめぐってしまうため、不安に不安が重なる悪循環が起きやすいのです。
そのため、「この症状が命に関わるものではない」と頭で理解しておくことが、対処の第一歩になります。
◆ 自分でできるパニック発作への対処法
実践その1)「これはパニック発作であり、必ずおさまる」と自分に言い聞かせる
発作時、頭の中に「怖い想像」があふれてしまうと、余計に交感神経が刺激され、症状が悪化してしまいます。そこでまずは、理性的な自己対話を行いましょう。
自分に次のように語りかけてみてください:
・「これは心臓発作ではない。パニック発作だから大丈夫」
・「私は今、不安によって体が反応しているだけ」
・「何度も経験したけれど、今回も乗り越えられる」
このように思考を現実に引き戻すことが、不安の波にのまれずに済む大きな助けになります。
実践その2)「腹式呼吸」で呼吸を整える
パニック発作では過呼吸になりがちです。息が浅く早くなり、結果として二酸化炭素の量が下がってめまいや手足のしびれが生じます。そんなときに最も有効なのがゆっくりとした腹式呼吸です。
・やり方(座っていても立っていてもOK):
- 背筋を伸ばして、リラックスした姿勢をとる
- 鼻から静かに息を吸い、お腹を膨らませる(4秒)
- 口から細く長く息を吐きながら、お腹をへこませる(8秒)
- これを3〜5分間ゆっくりと繰り返す
吸う:吐く=1:2の呼吸がポイントです。吐く時間を長くすることで、副交感神経が働き、体がリラックスモードになります。
実践その3)今ここに意識を戻す(グラウンディング)
パニック発作中は、「現実感がなくなる」「自分が自分でないように感じる」といった離人感を伴うことがあります。そのようなときは、五感に意識を向けるグラウンディング技法(現実接地法)が非常に有効です。
- グラウンディングのやり方:
5-4-3-2-1法(五感を使ったグラウンディング)
・目に見えるものを5つ探す
(例:壁の色、時計、木、カップ、靴)
・触れられるものものを4つ探す
(例:椅子の座面、洋服の素材、床の感触、手のひら)
・3つ:今聞こえる音を3つ確認する (例:外の車の音、エアコンの音、自分の呼吸音)
・2つ:匂いを2つ探す
(例:ハンドクリームの香り、部屋の空気のにおい)
・1つ:味を1つ感じる
(例:口の中の味を意識する、ミントタブレットの味)
これにより、「不安な想像」から「現実の身体感覚」に意識が戻ってくるのです。
実践その4) 安心できる「イメージ」を頭に思い浮かべる
人は、心地よいイメージを思い浮かべるだけでも自律神経が安定します。次のようなものを思い浮かべてみてください。
- 家族や友人、ペットなど安心できる存在
- 自然の風景(海、森、青空、温泉など)
- 好きな音楽や香り
イメージ療法は、特に視覚・聴覚・嗅覚が敏感な方に効果的です。安心感を取り戻すひとつの方法として試してみてください。
実践その5) 発作の記録をつけて「自分を知る」
発作が治まった後は、「また起きたらどうしよう」と不安になりがちですが、そこで自分を責めるのではなく、「よくがんばった」と自分を労うことが大切です。
そのうえで、「いつ・どこで・どんな状況で発作が起きたか」「どんな対処が効果的だったか」をメモしておくと、次回以降の対応に役立ちます。
記録しておくべきポイント:
- 発作が起きた場所や時間
- 直前の出来事や気持ち
- 発作中にとった対処法
- うまくいったこと、反省点
この積み重ねが、「次はこうすれば大丈夫かも」という自己信頼につながります。
◆ ひとりで悩まず、専門家の力も借りましょう
どれだけ自分でできる対処法を身につけても、やはり不安が大きすぎるときには医療的なサポートが必要です。
当院では、パニック障害に対して以下のようなアプローチを行っています:
- 薬物療法(必要に応じて抗不安薬やSSRI(抗うつ薬)を使用)
- 認知行動療法(不安への考え方と行動を整えるトレーニング)
「発作が怖くて外出できない」「日常生活に支障がある」などのお悩みがある方は、どうぞ一人で抱え込まずご相談ください。不安に向き合う力は、適切なサポートの中で少しずつ回復することができます。
◆ まとめ
パニック発作は非常につらいものですが、命に関わることはなく、発作をコントロールするスキルを身につけることで不安との付き合い方が変わってきます。
今回ご紹介した対処法は、どれもすぐに実践できるものばかりです。焦らず、少しずつ、自分のペースで試してみてください。
あなたの不安に寄り添い、回復を一緒に支えるクリニックとして、私たちはいつでもお手伝いします。
(ご相談・ご予約は、当院ホームページからお気軽にどうぞ)
参考:グラウンディングとは?不安やストレスを和らげる心の安定法
(ひだまりこころクリニック)
院長 佐久間一穂
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