自分でできる双極性障害チェック ― MDQ(ムード障害質問票)とは?
双極性障害(躁うつ病)は、うつ状態だけでなく、気分が異常に高揚する「躁状態」やその軽い「軽躁状態」がみられる疾患です。適切な治療を受けるためには早期発見が重要ですが、実はこの病気は「うつ病」と誤診されやすく、診断が難しいことでも知られています。そんな中、自分自身で気づく手助けになるのが、MDQ(Mood Disorder Questionnaire:ムード障害質問票)というスクリーニングツールです。
MDQとは?
MDQは、双極性障害のリスクをスクリーニングするための質問票で、精神科医や研究者によって開発されました。日本語版も作成され、臨床現場やセルフチェックに利用されています。診断を確定するものではありませんが、「双極性の兆候があるかどうか」を簡単に確認できる点で非常に有用です。
MDQ(The Mood Disorder Questionnaire:気分障害質問票)
① 他の人から見て、普段のあなたとは違うと思われてしまうほど、またはトラブルに巻き込まれてしまうほど、気分が良かったり、気分が高揚してたりしたことはありますか?
(はい/いいえ)
② 人に怒鳴ったり、喧嘩や口論をしたりするほどイライラしていたことはありますか?
(はい/いいえ)
③ いつもよりもずっと、自分に自信が持てると感じたことはありますか?
(はい/いいえ)
④ いつもよりずっと睡眠時間が少なくても、それほど困らないと感じたことはありますか?
(はい/いいえ)
⑤ いつもより多弁になったり、早口になったりしましたか?
(はい/いいえ)
⑥ 考えが頭の中を駆け巡って、心を落ち着かせることができなかったことはありますか?
(はい/いいえ)
⑦ 周りのことに気を取られやすく、集中したり、持続的に取り組んだりするのに苦労したことがありますか?
(はい/いいえ)
⑧ いつもよりずっとエネルギーに満ちていると感じたことはありますか?
(はい/いいえ)
⑨ いつもよりずっと活動的であったり、多くの活動を行っていたりしたことはありますか?
(はい/いいえ)
⑩ いつもよりずっと社交的だったり、外交的だったりしましたか;例えば、夜中に友人に電話をかけるとか
(はい/いいえ)
⑪ いつもより性についての関心が高まったりしましたか?
(はい/いいえ)
⑫ いつもの自分ならしないようなことをしたり、他の人から見れば、やり過ぎ、愚かしい、または危険だと思われるようなことしたことがありますか?
(はい/いいえ)
⑬ 浪費によって、自分や自分の家族を困らせたことはありますか?
(はい/いいえ)
- (上の1. で1つ以上に「はい」と答えた方に聞きます)①~⑬のことが、2つ以上同時に起こったことはありますか?
(はい/いいえ) - 上記のことで、どのくらい困りましたか、例えば、仕事に支障があった、家族関係に問題があった、お金で困った、法律のトラブルがあった、口論や喧嘩をしてしまったなど。
[ ]問題なし
[ ]軽微な問題
[ ]中程度の問題
[ ]深刻な問題
あなたの血縁者(子供、兄弟姉妹、両親、祖父母、叔母、叔父)の中に双極性障害の人はいますか?
(はい/いいえ)
MDQのスクリーニング基準(参考)
以下の3つをすべて満たす場合、スクリーニング陽性(双極性障害の可能性あり)とされます(※臨床では柔軟に扱われます):
- ステップ1で7項目以上が「はい」
- ステップ2が「はい」
- ステップ3が「中程度」または「深刻な問題だった」
以上13項目のうち7項目以上が「はい」であり、2つ以上の症状が同時に発生していることを確認し、機能障害が中等度から重度であると評価した場合に、MDQは陽性であると考えられます。
双極性障害の人の多くは自分の症状についての洞察力に欠けていますので、家族や友人に代わってMDQを記入してもらうことは有益です。
*なぜMDQが大切なのか?
うつ状態しか経験していない段階では、患者さん自身も「うつ病」だと思い込みがちです。しかし、実は過去に軽躁エピソードがあったというケースは少なくありません。MDQはそうした見逃されがちな軽躁症状に気づく手がかりとなり、適切な治療への第一歩になります。
*注意点と活用方法
MDQはあくまでもスクリーニング(ふるい分け)ツールであり、これだけで双極性障害の診断が確定されるわけではありません。結果が陽性でも、最終的な診断は精神科医による面接や診察が必要です。MDQで気になる結果が出た場合は、精神科や心療内科を受診し、専門家に相談してみましょう。
まとめ
双極性障害は見逃されやすく、誤診されることも多い病気です。MDQのような簡単なチェックツールを使うことで、早期に自分の状態に気づくことができるかもしれません。気になる症状がある方は、ぜひ一度セルフチェックしてみてください。そして必要に応じて、早めに専門家へ相談することが、回復への第一歩になります。
参考文献:
双極スペクトラム障害の診断1110060633.pdf
院長 佐久間一穂
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