不安が止まらない…それ、不安障害かもしれません|原因・症状・治療を医師目線で解説
「理由ははっきりしないのに不安が続く」「些細なことで強い心配に襲われる」「動悸や息苦しさで日常生活に支障が出ている」こうした状態が長く続いている場合、不安障害の可能性があります。不安は誰にでも起こる自然な感情ですが、過剰で慢性的になると心身に大きな負担を与え、治療が必要な状態に進むことがあります。本稿では、不安障害について医学的な観点から分かりやすく解説します。
<不安とは何か|誰にでも起こる正常な反応>
不安は、危険を予測し回避するための生体防御反応です。脳内では扁桃体や前頭前野が関与し、自律神経やホルモン系(アドレナリン、コルチゾールなど)が活性化します。適度な不安は集中力を高めますが、刺激がない状況でも反応が続くと、睡眠障害、疲労、消化器症状など多様な不調を招きます。
<不安障害の主な種類|代表的な4つのタイプ>
不安障害は一つの病名ではなく、いくつかの疾患群の総称です。
- 全般性不安障害(GAD):仕事、健康、家族など複数の事柄について、過剰な心配が6か月以上続きます。筋緊張、易疲労感、集中困難を伴うことが多いです。
- パニック障害:突然の強い不安発作(パニック発作)を繰り返します。動悸、息切れ、めまい、死の恐怖が特徴で、発作への予期不安が生活範囲を狭めます。
- 社交不安障害:人前で注目される状況に強い恐怖を感じ、回避行動が目立ちます。
- 特定の恐怖症:高所、閉所、注射など特定対象に限って強い恐怖が生じます。
<不安障害の症状|心だけでなく体にも現れるサイン>
不安障害では、精神症状と身体症状が同時に起こることが少なくありません。精神面では過度な心配、恐怖、イライラ感、抑うつ気分がみられ、身体面では動悸、発汗、震え、胃腸不調、頭痛、肩こりなどが現れます。検査で異常が見つからず「気のせい」と言われることで、さらに不安が強まる悪循環に陥る場合もあります。
<不安障害の原因と発症メカニズム>
不安障害の発症には、遺伝的素因、脳内神経伝達物質(セロトニン、ノルアドレナリンなど)の不均衡、ストレス体験、性格傾向が複合的に関与します。完璧主義や過度な責任感、幼少期の不安体験が背景となることもあります。
<不安障害の診断方法|何科を受診すべきか>
不安障害の診断は、精神科・心療内科での詳細な問診が中心です。症状の内容、持続期間、生活への影響を確認し、甲状腺疾患や心疾患など身体疾患を除外します。
<不安障害の治療法|薬物療法と心理療法の選択肢>
治療の柱は薬物療法と心理療法です。
- 薬物療法:選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)などが第一選択として用いられます。効果発現まで数週間を要するため、継続が重要です。必要に応じて抗不安薬が短期間併用されることもあります。
- 心理療法:認知行動療法(CBT)は、不安を強める思考パターンや回避行動を修正し、再発予防にも有効とされています。
<不安障害のセルフケア|日常生活でできる対処法>
治療と並行して、生活習慣の見直しも重要です。十分な睡眠、規則正しい食事、適度な運動、カフェインやアルコールの過剰摂取を避けることが、不安症状の軽減につながります。呼吸法やマインドフルネスも補助的に役立ちます。
<不安障害で病院を受診する目安>
以下に当てはまる場合は、精神科・心療内科への相談を検討してください。
- 不安や緊張が2週間〜1か月以上続いている
- 動悸、息苦しさ、めまいなどの身体症状が繰り返し出現する
- 仕事や学業、家事など日常生活に支障が出ている
- 外出や人前など、特定の状況を避けるようになっている
早期受診により、症状の慢性化や重症化を防げる可能性があります。不安障害は適切な治療で改善が期待できる疾患です。
~体験談|不安が続いた30代会社員Aさんの場合~
Aさん(30代・会社員)は、数か月前から「理由のない不安」と動悸に悩まされていました。最初は仕事の忙しさが原因だと思い、我慢して働き続けていましたが、次第に電車に乗るだけで息苦しさを感じるようになり、外出を避けるようになりました。
内科で検査を受けても異常はなく、「ストレスでしょう」と言われたことで、Aさんの不安はむしろ強まりました。そこで心療内科を受診したところ、パニック障害と診断され、SSRIによる薬物療法と認知行動療法を開始しました。
治療開始から数週間で発作の頻度は減少し、「不安が出ても対処できる」という感覚が持てるようになったといいます。現在も通院を続けながら、無理のない生活リズムを心がけ、安定した日常を取り戻しています。
このように、不安障害は早期に適切な治療を受けることで、生活の質を大きく改善できる疾患です。
➤よくある質問(FAQ)|不安障害についての疑問
Q1. 不安障害は自然に治りますか?
軽症の場合、環境調整で改善することもありますが、多くは治療により回復が早まります。我慢を続けると慢性化するリスクがあります。
Q2. 薬は一生飲み続ける必要がありますか?
症状が安定すれば、医師の判断で減量・中止が可能なケースが多いです。
Q3. 内科と心療内科、どちらを受診すべきですか?
身体検査で異常がない不安症状が続く場合は、心療内科や精神科が適しています。
●おわりに|不安が止まらないとき、ひとりで抱え込まないでください
「不安が止まらない」状態は、決して弱さや性格の問題ではありません。脳と心の働きに基づく医学的な疾患であり、支援を受ける価値があります。
不安障害は、適切な診断と治療により改善・回復が十分に期待できる病気です。少しでも「おかしい」「つらい」と感じたら、早めに専門医へ相談してください。 「不安が止まらない」状態は、決して弱さや性格の問題ではありません。脳と心の働きに基づく医学的な疾患であり、支援を受ける価値があります。ひとりで抱え込まず、専門家とともに回復への一歩を踏み出しましょう。
八丁堀 日本橋 心療内科 精神科 ミチワクリニック|東京都中央区
院長 佐久間一穂
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