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ストレスがまねく副腎皮質ホルモンの身体への影響とは?副腎疲労症候群!?

●副腎皮質ステロイドホルモンの種類と働きとは?

副腎ホルモンは、健康維持に非常に重要なたくさんの働きをしています!

副腎が正常に機能しなくなると命にも影響が及びます!

副腎皮質で合成されるステロイドホルモンは中間代謝物を含めると50種以上ありますが,重要なものは,グルココルチコイドであるコルチゾール(cortisol),ミネラルコルチコイドであるアルドステロン(aldosterone)、それから副腎アンドロゲンであるデヒドロエピアンドロステロン(DHEA)とDHEA-サルフェート(DHEA-S)があります。

 

1)グルココルチコイド(糖質コルチコイド)の生理作用

 コルチゾールは、ヒト副腎で分泌される主要なステロイドで,ストレスから生体を防御する働きがあり生命維持に必須のホルモンです。

グルココルチコイドは、グルコースの代謝調節作用を有することから名づけられましたが、代謝系ばかりでなく,免疫系,水・電解質・循環系に対しても多彩な作用を有しています。

a)糖代謝

 肝臓でグルコース六リン酸ホスファターゼ(glucose-6-phosphatase)やPEPCK(phosphoenolpyruvate kinase)など糖新生系酵素を誘導し糖新生を促進,骨格筋や         脂肪組織でのグルコース取り込みの低下,インスリン分泌の抑制などにより血糖を上昇させます。また、グリコーゲン合成酵素を誘導し肝のグリコーゲン蓄積を増加させる働きもします。

b)蛋白代謝

 末梢組織(筋肉など)の蛋白を分解し,生じたアミノ酸を肝に移動して糖新生を促進します。

c) 脂質代謝

 脂肪を分解し、脂肪酸とグリセロール(中性脂肪,リン脂質,糖脂質などの構成成分)の産生を促進させます。

d)免疫抑制・抗炎症作用

 グルココルチコイドは免疫反応を抑制し、抗炎症作用を示します。その結果,感染症に対する防御機構が抑制されます。ライソゾーム膜の安定化、ホスホリパーゼA2を抑制するアネキシンIの誘導,プロスタダランジンE合成酵素やシクロオキシゲナーゼ-2の発現抑制,炎症性サイトカイン(IL-1,IL-2,IL-3,IL-6,IL-8,TNF-αなど)の産生抑制などにより炎症反応を抑制します。

ブラジキニン、ヒスタミン、プラスミノーゲン活性化因子の作用を阻害し、血管の透過性を減弱させます。多核白血球の骨髄からの放出を促進させるため、血中の多核白血球が増加し、Tリンパ球の減少、好酸球減少、胸腺やリンパ組織の縮小、遅延型過敏反応の抑制、Bリンパ球の抗体産生を抑制し血中ガンマグロブリンを減少させます。

また、コラーゲンの形成,肉芽腫形成が障害され、創傷治癒が遅延します。

炎症を引き起こし、促進する蛋白群の産生は、核内因子κB (NF-κB)やアクチベーター蛋白1(AP-1)などの転写因子が作用することが重要なステップとなります。NF-κBはその阻害蛋白であるinhibitor of NF-κB(IκB)に結合した状態では細胞質にとどまっていますが、種々の刺激によりIκBが解離すると核内へ移行し炎症関連遺伝子群の転写を促進します。グルココルチコイド(GC)が結合したグルココルチコイド受容体(GR)は、NF-κBやAP-1に直接結合することにより、NF-κBやAP-1の作用を抑制しています。

この機構によりGCは、グルココルチコイド応答領域(GRE)をもたない炎症性サイトカインや接着因子の遺伝子の発現を強力に抑制して抗炎症効果を発現します。

e)骨組織に対する作用

 グルココルチコイドは骨芽細胞の機能に対し二相性の作用を示します。生理量では間葉系細胞の骨芽細胞系への分化と増殖を促進します。

f)水・電解質・循環系に対する作用

 腎血流量と糸球体濾過率(glomerular filtration rate:GFR)を増加させます。また尿細管における抗利尿ホルモン(ADH)の作用と拮抗し、自由水クリアランスを増加させ水利尿作用を発現します。心臓刺激作用、交感神経機能維持作用、レニン基質の増加、腎でのカリクレインおよびPGE2産生障害、血管平滑筋細胞の1型アンジオテンシンⅡ受容体(AT1)の増加作用などにより血圧を上昇させます。また,胃酸分泌を増加させます。

g)中枢神経に対する作用

 中枢神経細胞の刺激閾値を低下させて興奮性を高めます。

h)ストレスホルモンとしての作用

 ストレス状態ではグルココルチコイド分泌は平常時の10倍にまで達し,循環器機能を高め,エネルギー代謝を亢進させて緊急状態に適合させます。

2)ミネラルコルチコイド(鉱質コルチコイド)の生理作用
 ミネラルコルチコイドの代表はアルドステロンですが、ミネラルコルチコイドが主に作用する臓器は腎臓で、その他,腸管,汗腺,唾液腺にも作用してます。ミネラルコルチコイドの基本的な作用は、ミネラルコルチコイド受容体を介して腎においてNaを再吸収し,Kの排泄を促進することです。遠位曲尿細管のNa-Cl共輸送体と集合管のNaチャネルに作用し、NaとKおよびNaとHの交換を促進させます。

腎,心機能が正常なヒトでは,ミネラルコルチコイドによるNa貯留には限界があり,ミネラルコルチコイドの過剰が持続してもあるレベルでNa,水の出納が平衡状態に達しそれ以上のNa再吸収の増加と、それに基づくNa貯留はみられなくなります。

Kの尿中排泄増加は、腎のNa再吸収と連動しており,遠位尿細管に達するNaの量が少ないと,ミネラルコルチコイドが多くても低カリウム血症はみられません。

(4)副腎アンドロゲンの生理作用
 DHEA-SおよびDHEAは副腎アンドロゲンと呼ばれ、その90%以上が副腎で生合成される.コルチゾール分泌が加齢によりほとんど変化しないのと対照的に副腎アンドロゲンは20歳以降,加齢とともに直線的に減少します。DHEAはweak androgenであり,アンドロゲン作用はテストステロンの1/20程度です。DHEAは生体内でテストステロンやエストラジオールへ変換して作用する一方,抗糖尿病,抗動脈硬化作用が独自の作用として報告されており、長寿ホルモンとも言われています。

 

●強いストレスが継続し、副腎皮質ステロイドホルモンの過剰分泌が続くと?

グルココルチコイドが、慢性的に過剰になると『クッシング症候群』という症状が現れ、カラダのあちこちに不調がみられるようになります。

*タンパク質分解の亢進

タンパク質が分解されるので筋肉が落ちて四肢が細くなり、皮膚は薄く毛髪も薄くなります。また、疲労しやすくなります。

*脂質代謝異常

脂肪代謝に異常をきたし、高脂血症になり、四肢は痩せるのに顔や体幹(肝や腹腔内)には脂肪が沈着します。

*糖代謝異常

高血糖になり糖尿病を発症しやすくなります。

*メタボリックシンドローム

高血圧、高脂血症、内蔵脂肪・腹囲の脂肪増加も伴います。

*ミネラルバランス異常、利尿の低下

ナトリウムが体内に溜まり、低カリウム血症や代謝性アルカローシスをきたし、高血圧になります。

*骨形成障害(骨粗鬆症)

骨芽細胞の分化の後期を抑制,アポトーシスを誘導,局所での増殖因子の産生の抑制,骨形成シグナルを抑制して骨形成を抑制し,ステロイド性骨粗鬆症を引き起こします。

*消化器系への異常

グルココルチコイド過剰では、胃などの消化器系への影響が生じ、胃酸分泌が増加し、過剰量では消化性潰瘍を発症させることがあります。

*精神障害の合併

グルココルチコイドの過剰が継続すると、脳神経のホルモン分泌異常が生じ、精神的に不安定で,抑うつ、幻覚、不眠などの精神症状が生じることもあります。

*皮膚障害

あざができやすく、打撲傷や切り傷は治りにくくなります。

同時に、副腎アンドロゲンも増やすので、性ホルモンの分泌過剰で、ニキビが出来やすくなったり、髭が濃くなったりといった美容の問題も出てきます。

グルココルチコイドの分泌促進で、VitCの補充が間に合わず、シミが増えたりもします。

 

 このように、過剰なストレスが継続すると、副腎皮質ステロイドホルモンの過剰分泌により、様々な代謝異常、体調不良を引き起こしてしまいます。

 

●強いストレスがさらに継続すると、副腎機能低下が生じて、副腎疲労症候群へ!?

強いストレス状態にさらされ、副腎疲労が起きる前にブレーキを踏みましょう!

下記の症状は、副腎機能が低下し、前述した副腎皮質ステロイドホルモンの分泌が減弱した結果生じており、栄養素の代謝、エネルギー産生、免疫力の低下、慢性炎症の惹起、水分・電解質の平衡、循環器系、性ホルモン、中枢神経ホルモンなどのバランス崩れ、異常をきたし、心身のエネルギーが枯渇した状況です。

副腎疲労症候群(アドレナル・ファティーグ)と呼ぶ状態です。

👉👉こうなると重症な疲労蓄積状態です、朝から起きらず、食欲はない、外出の困難、夜も眠れない、日常生活も大変になってしまう心身の状態です!!

 

*副腎疲労症候群の症状とは?

・朝起きるのがつらい。

・熟睡できず、朝目が覚めても疲れがとれていない。

・甘いものや塩分が濃いもの(しょっぱいもの)が欲しくなる。

・エネルギーが不足している感じがする。元気が出ず、だるい。

・今までで来ていた日常的なことをやるのに一苦労する。

・性への興味が低下している。性欲がない。

・ストレスにうまく対処できない。小さなことでもイライラし人に八つ当たりしてしまう。

・風や呼吸器の感染症に罹りやすい。罹ってもなかなか治らない。ぶつけた傷も治りにくい。

・気持ちが落ち込む。うつっぽい感じがする。

・人生に何の意味も見いだせない。楽しいことがない。

・PMS(月経前症候群)が悪化している。

・月経の始まる数日前から、腹痛・頭痛・肩こり・むくみ・便秘・下痢・眠気・気分の落ち込みなどが激しくなる。

・これらの症状は月経がはじまると軽快する。

・コーヒーやコーラなどのカフェインの入った飲み物やチョコレートを口にしないとやる気が出ない。

・ボーっとすることが多い。集中力が低下した。

・物忘れをすることが多くなった。昼食に何を食べたか思い出せないほど記憶力が落ちた気がする。

・食事をスキップするとぐったりしてしまう。

・甘いものを食べると元気になるが、その後だるくなる。

・我慢が出来なくなり、急にきれてしまう。

・夕食後の午後6時以降になると少しずつ元気になってくる。

(本間良子先生著「しつこい疲れは副腎疲労が原因だった」より引用)

👉上記項目のうち3項目以上当てはまる場合は、「副腎疲労」の可能性があります。

 

まとめ

☆副腎皮質ホルモンが、ストレスで過剰に分泌出来ている間はまだ活動できてます。

この状態を放置してアクセルを踏み続けると心身疲弊状態(副腎疲労症候群)にな 

り、回復に相当時間が必要になってしまいます。

過労やストレスが継続し、副腎ホルモン過剰分泌の危険信号に気づいたら、意図的に休息を取るようにしましょう。

まずいと思ったら、一人で悩まずに早めに相談に来られることをお勧めします!!

 <副腎疲労症の状態は、簡単な唾液検査で客観的診断も可能です。>

👉副腎疲労外来

 

院長 佐久間一穂

https://www.michiwaclinic.jp/

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