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腸内細菌の食欲調節、代謝(体温調節)作用   新たな脳腸相関発見!

今回は、やや専門用語が多い文章で一般の方にはわかりにくいかもしれませんが、ざっくばらんに説明しますと、腸内細菌の細胞壁の物質が、脳にホルモンや免疫物質のような伝達物質を送っていることがわかり、脳腸相関(脳と腸が互いに連携している)の理由がまた新たに証明されたということです。

 

神経細胞Nod2受容体を介した細菌センシングは食欲と体温を調節します

<科学雑誌Scienceの報告から  15 Apr 2022 • Vol 376>

https://www.science.org/doi/10.1126/science.abj3986

(要約)

腸内細菌は脳機能と代謝に影響を与える新たな事実が検証された。我々は、脳神経細胞による細菌細胞壁成分の直接感知によって、腸の情報が媒介されるかどうかを調べた。マウスでは、細菌性ペプチドグリカン(腸内細菌の細菌壁の断片)が、Nod2受容体を介した腸と脳の情報交換を媒介する上で主要な役割を果たすことを見出した。ペプチドグリカン由来のムロペプチドは脳に到達し、Nod2を発現する脳神経細胞のサブセットの活性を変化させる。視床下部抑制性ニューロンにおけるNod2の活性化は、主に女性において、適切な食欲および体温制御に不可欠であることが判明した。この研究にて、摂食行動と宿主代謝を調節する微生物感知メカニズムがあることが明らかになった

注釈Nod2は、免疫系がムロペプチドと呼ばれる細菌細胞壁の断片を認識するのを助けるパターン認識受容体のことです。)

(詳細は、上記ホームページアドレスを参照ください)

   「ニューロンNod2を介した細菌センシングは食欲と体温を調節します」

    https://www.science.org/doi/10.1126/science.abj3986から引用

 

直接に、脳と腸内細菌の伝達回路が体内に備わっていたとの発見は驚き!

(腸内細菌は、体内の代謝を調整する一つの臓器ともいえるかもしれません。)

これまでも腸内細菌が、食欲や代謝を変えることが研究され、肥満や糖尿病との関連性が指摘されていました。これまでの研究では、食欲については、腸内細菌が食物繊維などを発酵して作る短鎖脂肪酸という物質が、腸管細胞から消化管ホルモンを分泌させ、脳内の視床下部を刺激し食欲を調整したり、脂肪の代謝に作用するということでした。

また、体温調節や体内の代謝についても、この短鎖脂肪酸が自律神経を刺激することで前述の視床下部が反応し、ホメオスターシス(生体恒常性)を維持しようとして代謝に影響を及ぼし、体温の調節にも作用するとの研究結果がありました。

しかし、今回のこの研究報告では、腸内細菌の細胞壁の断片のムロペプチドが、直接に脳内の視床下部を刺激し、食欲や体内の代謝や体温調節を行っていることを証明したものでした。脳内にこのムロペプチドを感知する受容体があるとのことで、ホルモンや免疫物質と同様に、もともと脳と腸内細菌の伝達回路が体内に備わっているということを示していることになります。

 

まとめ

腸内環境が悪い方が治療で改善すると、体重が減ったり、活動性が高まったり、不安や抑うつなどの症状も改善することは、日常的に良く経験していることでしたが、腸内細菌や腸の働き、脳腸相関、代謝改善の理由が明らかになってきたことは朗報です。

今後も、腸内細菌(腸内フローラ)と腸、脳神経、その他の身体部位との関連性が明らかにされて行くのが楽しみです。

腸内環境ケア外来👉

ミチワクリニック

院長 佐久間一穂

https://www.michiwaclinic.jp/

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